医療法人社団 めぐみ会

ドクターズコラム
Doctor's Columns

2009年07月01日

動悸や息切れ年のせいだと思っていませんか

「10年前と比べるとずいぶん体力が落ちたなあ」「ちょっとしたことで息が切れるなあ」もしかしたら年齢のせいではなく心臓病かもしれません。  心臓には四つの弁があり、この弁のおかげで血液は逆流することなく一方向に流れています。しかし弁の調子が悪くなると血液の流れが悪くなったり、血液が逆流するようになります。 

四つの弁のうち心臓の出口にある弁を大動脈弁と呼びますが、最近この弁が十分に開かなくなる大動脈弁狭窄症という病気が増えてきました。この病気では弁が堅くなって動きが悪くなるため心臓の出口が細くなってしまいます。ちょうど口の中に水を溜めて、口をすぼめて吐き出すような格好になります。血液は勢いよく出ますが心臓にかかる負担は大きくなります。 

大動脈弁狭窄症では毎回力一杯の仕事をしなくてはならず、心筋(心臓の筋肉)はどんどん厚くなっていきますしかも心筋は外に向けてではなく内に向けて厚くなるので血液を入れる容量が減り、次第に一回に送り出される血液量が減少してしまいます。 

送り出される血液量の不足は様々な症状となって現れます。もっとも危険なのは脳血流の低下による失神(意識消失)と冠動脈(心臓を養っている血管で、この血管がつまってしまうと心筋梗塞になります)の血流低下による胸痛です。いずれも生命に関わる状態です。手術が必要な患者さんのうち何人かはこのような状態で救急搬送されて来ます。こんな危険な状態になる前に何とかならなかったのでしょうか。もっと早い時期に見つけることはできなかったのでしょうか。この病気は聴診(胸に聴診器をあてる)だけでほとんど診断がつき、超音波検査で重症度が判断できます。 

心臓は一日に約十万回拍動しています。もちろん私たちが寝ている間もずっと動いています。このようにずっと働き続ける心臓ですが、調子が悪ければどこかで知らせてくれるはずです。急いで歩くと動悸(胸がドキドキすること)がする。階段を上ると息が切れるなど、つい「私も歳をとった」で済ませてしまうような症状ですが、こんな症状が頻繁に出てきたら要注意です。大きなことになる前にちょっとだけ聴診器を当てさせて下さい。

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