2009年05月01日
尿検査といえば、言わずと知れた蛋白尿や血尿の有無を知る検査です。小さい頃から健康診断で尿検査に慣れ親しんでいる日本人には、尿検査を知らないという方は少ないと思いますが、尿検査の意義を理解している日本人もまた少ないかもしれません。
まず、尿は腎臓という臓器で作られますから、膀胱炎など一部の疾患を除いて、蛋白尿は腎臓の障害度を表すといっても過言ではありません。腎臓の機能が失われると透析という治療を受けなければなりませんが、例えば健康診断で尿蛋白陽性を指摘された方が将来透析治療を受ける確率は5%~10%、すなわち10人~20人に一人とかなり高頻度であることが報告されています。また、蛋白尿と血尿のいずれも陽性の方は、10年間で3%、すなわち30人に一人が透析導入になっています。
このように蛋白尿の出ている腎臓の寿命が短くなる一つの理由は、尿の中にある蛋白質そのものが腎臓に対して障害性を持つからです。ですから蛋白尿が出続けている腎臓は、出ていない腎臓に比べて長持ちしないのです。
さらに驚いたことに、蛋白尿は腎臓だけでなく心筋梗塞や脳梗塞のリスク因子としても考えられています。蛋白尿が出ている方は、出ていない方に比べ、心筋梗塞や脳梗塞を発症し易いということです。そして大規模研究の結果では、蛋白尿を減らすことで梗塞発症の可能性を抑えることも出来るという結果も出ています。
またアメリカ心臓学会の報告では、既に心筋梗塞や脳梗塞を発症した患者さんの余命も蛋白尿の有無で大きく違うとされており、過去に梗塞を起こした患者さんは検尿して蛋白尿の有無を確認することが強く勧められています。
たかが蛋白尿と思われがちですが、実は腎臓の寿命を規定するだけでなく、心筋梗塞・脳梗塞のリスクとなり、ひいてはその人自身の寿命にも大きく関与することになるのです。ですので、せっかく受けた健康診断で蛋白尿を指摘された場合、放置せず気軽に腎臓内科の外来を受診してみて下さい。皆さんのアドバイザーとして二人三脚で健康管理が出来れば、と考えています。