2008年4月 1日
血圧には収縮期血圧と拡張期血圧があり、それぞれ140mmHg、90mmHg以上の場合に高血圧症と診断します。
高血圧症の原因は様々であり、遺伝的な影響や塩分の取りすぎ、運動不足などの生活習慣、ストレスなどを背景としておこる「本態性高血圧症」、血圧に関連するホルモンの異常、腎機能障害、睡眠時無呼吸症候群などが原因となる「二次性高血圧症」があります。原因に関わらず、血圧が高い状態が持続すると血管や心臓に負担をかけて様々な合併症を起こします。
メタボリック症候群は、内臓肥満によるアディポカインの分泌異常とインスリン抵抗性により脂質・糖の代謝異常が起こることをこれまでご説明してきましたが、それ以外にレニン・アンジオテンシン系と呼ばれるホルモンがメタボリック症候群に関与していて、その調節異常がメタボリック症候群での血圧上昇に関与すると考えられています。レニン、アンジオテンシンはそれぞれ腎臓、肝臓で合成され、血管の収縮やアルドステロンというホルモンを介した腎臓での水分・電解質の調節に関与します。また、レニン・アンジオテンシン系は血管や心臓などの組織内にも存在し、細胞の増殖に関与していて、この組織レニン・アンジオテンシン系の調節が乱れることにより動脈硬化や心臓肥大が進行してしまいます。
メタボリック症候群の診断基準の中で、血圧に関しては高血圧の前段階である「正常高値血圧=収縮期130mmHg以上、拡張期85mmHg以上」を基準値としています。これは、「高血圧症」という診断がつく以前の段階で動脈硬化の進行の危険性があることを認識し、できるだけ早期に生活習慣を改善することが望ましいからです。健康診断以外でも自動血圧計などでご自身の血圧をチェックする機会があるかと思いますが、高血圧症になっていないからといって安心はできません。メタボリック症候群の場合には、その前段階から体内のホルモンバランスが崩れ、何も自覚症状がないうちに血管のダメージが進行している可能性があるのです。
病気の予防はできるだけ早期にその危険性を認識することから始まります。当健診センターの「メタボリック・ドック」で体の状態をチェックすることをお勧めします。
担当クリニック:田村クリニック