2008年3月 1日
高脂血症=脂質代謝異常というと、これまでは、コレステロールを低下させることが動脈硬化予防の上で重要視されてきました。コレステロールの値というと、以前は「総コレステロール」を指すのが一般的でしたが、現在は、一般に悪玉コレステロールと呼ばれている「LDLコレステロール」の値について動脈硬化のリスクを判断するようになっています。そして、数多くの研究結果でLDLコレステロールを低下させることが心筋梗塞の予防に有効であることが示されてきました。
しかし、コレステロールだけを低下させても、他の危険因子も改善させなければ不十分であることが改めて認識されるようになり、とくにメタボリック症候群のように危険因子が重複して存在する状態が動脈硬化予防の上で注目されるようになりました。
メタボリック症候群では中性脂肪(トリグリセライドとも言います)が高くなります。これは内臓脂肪の蓄積とインスリン抵抗性の結果、脂肪組織から血液中を流れて肝臓に入ってくる脂肪酸が増え、肝臓でVLDLという中性脂肪を多く含んだ物質が過剰に作られるためです。このVLDLは血液中の酵素により分解されて「レムナント」という物質になりますが、これが動脈硬化を引き起こす過程で中心的な役割を果たしていると考えられています。
また、一般に善玉コレステロールと呼ばれている「HDLコレステロール」が低くなるのもメタボリック症候群の特徴の一つです。HDLコレステロールは、血管壁に沈着したコレステロールを引き抜き肝臓に運ぶ役割を果たしていて、これが低下することで動脈硬化が進行しやすくなります。
メタボリック症候群で認められる危険因子の重複に対して、個々の病態に対して薬で改善させることは可能です。中性脂肪についても高い状態が続けば薬物治療が必要になります。しかし、メタボリック症候群の根本的な問題である内臓肥満を改善することが治療の本質です。当健診センターでは隣接するフィットネス施設と連携して、運動指導や食事指導による生活習慣の改善のお手伝いをいたします
生活習慣改善によって脳卒中、心筋梗塞の予防をしましょう。
担当クリニック:田村クリニック