2008年02月01日
内臓肥満によるアディポカインのバランスの乱れ、その結果として生ずるインスリン抵抗性について、前回ご説明しました。今回はメタボリック症候群がさらに進行した状態で合併してくる生活習慣病の一つ、糖尿病について取り上げます。
メタボリック症候群では肝臓などでのインスリンの働きが低下し、食事から摂取された糖質を十分に処理することができず、特にその初期の段階では食後の血糖値が上昇しやすくなります。そのまま放置しておくと、次第に空腹時の血糖も上昇し、糖尿病の状態となります。
糖尿病は様々な合併症を引き起こします。いわゆる三大合併症として網膜症・腎症・神経障害があります。網膜症が悪化すると失明する場合もあります。腎症については、蛋白尿から次第に腎機能の低下につながり、腎不全が悪化して人工透析が必要になることもあります。神経障害の症状としてはしびれや立ちくらみ、便秘・下痢などがあり、日常生活に支障を来します。また、糖尿病は動脈硬化の危険因子でもあり、脳卒中、心筋梗塞などの危険性を高めます。
糖代謝に関する検査としては、空腹時血糖値や尿糖検査、ヘモグロビンA1cという検査が一般的です。ですが、これらの検査は糖代謝のアンバランスが進行してから異常値をきたしてくるので、早期の異常を捉えることはできません。当健診センターのメタボリック・ドックでは1.5AGという値を調べます。これは、血糖の上昇に伴って尿に排泄され、食後の一時的な血糖上昇を鋭敏に反映します。
糖尿病の発症には運動不足、過剰なカロリー摂取だけでなく、遺伝子によって規定される「体質」という要素も関与しますが、内臓肥満の蓄積によるインスリン抵抗性が糖代謝異常悪化の一因であることは間違いありません。糖尿病の合併症を起こしてしまってからでは、元の状態に戻すことはできません。早期にインスリン抵抗性の状態を把握できれば、生活習慣の改善によって糖尿病を予防できる可能性が大きいので、人間ドックでチェックを受けることをお勧めいたします。