2008年10月01日
以前「腰痛のお話」の中で、腰痛を生じる様々な疾患を簡単にご紹介しました。今回は具体的に腰椎椎間板ヘルニアについて少し詳しく説明しようと思います。
いわゆる「ヘルニア」とはどのような状態かと言うと、組織の一部が本来あるべき腔から逸脱した状態を言います。椎間板は背骨の一つ一つの間に存在してクッションの役割を果たしているもので、中心部分にある髄核とその周りにある線維輪と言われる弾力性に富む組織で成り立っています。腰椎椎間板ヘルニアとはその椎間板内部の髄核が線維輪を押し出して一緒に膨らんだり、一部線維輪を破って髄核自体が飛び出してしまうものを言います。しかし、程度の差はありますが、そのヘルニアがある状態だけであれば、すぐに問題になることはありません。実際、年齢を重ねていくに従って椎間板は変性し変形していくことも多く、それでも無症状の場合も多いのです。問題なのは、飛び出したその組織が神経を圧迫して炎症を引き起こすことにより、いわゆる坐骨神経痛などの症状が生じた場合なのです。
典型的な症状としては、腰痛とともに主には片方の下肢に太ももからふくらはぎひいては足先まで痛みとしびれを伴います。よく「昔、腰が痛くてお医者さんに行ったら、レントゲンで椎間板ヘルニアだと言われたことがある」と言って来院される方も多いですが、腰痛のみの症状では椎間板によるものではなく、別の骨、関節、筋肉などが原因であることも多くあります。正確な診断はレントゲンももちろんですが、症状、身体所見が大事です。筋力低下(足の指の力が弱いなど)、感覚障害(足の一部が触られた感じが鈍いなど)、深部腱反射(膝蓋腱、アキレス腱を叩いた時の反応)などをチェックすることで、ヘルニアによる症状が疑われれば最終的にはMRI(磁石の力で神経が画像に映ります)と言う精密検査が必要になります。
治療については、程度により色々な選択肢がありますが、まずは消炎鎮痛剤などの薬物治療とともにコルセットなどで腰部の安静を図ります。更に段階的に電気、ホットパック、牽引などのいわゆるリハビリ治療、更にはブロック治療(硬膜外ブロック、神経根ブロックなど)などがあります。それでも効果がない場合には手術的治療になります。手術にもいくつかの方法があり、その場合には治療する先生や施設によってそれぞれ適応、方法の違いもあるので、まずはその場でよくお話を聞くことをお勧めします。