2008年01月24日
『風邪は万病の元』と昔からよく言われます。風邪のような些細な病も、放っておくと様々な病気に転じることをさします。しかし、その言葉が初めて使われたであろう時代よりも医学が発展した現代では、おそらくもっと深い意味をもっていると思われます。
そもそも風邪は単一の病原体による一つの病気ではなく、急性上気道炎という病態を示す「かぜ症候群」であり、殆んどは様々なウイルスによる感染が原因で す。従って多くの場合、数日から一週間程度で自然治癒が期待できます。ところが、同様の症状を示しながら、通常のかぜウイルス以外の感染症(マイコプラズ マ、肺炎クラミジア、結核、特殊なウイルスなど)の場合や、元は風邪でも細菌感染症を合併してくる場合があります。また、背景に気管支喘息が隠れていて、 特別な検査や治療を必要とすることもあります。さらに、糖尿病、心臓病、腎臓病といった慢性疾患を抱えているケースでは、風邪をきっかけにこれらの病態を 悪化させることもあります。他にも、日常的にはまれですが、免疫力の大幅な低下が引き金になって風邪症状を呈し、このような状態から別の病が見つかる場合 もあります。
これらのように、風邪が万病を直接引き起こすわけではなくとも、時には様々な病態と関わってくるわけです。
ただ、単純な風邪でも、やはり免疫力(抵抗力)が多少とも弱まって、ひいてしまうと考えられます。すなわち日常生活における睡眠不足、過労、ストレス過 剰、栄養のアンバランスなどが引き金になりえるということです。「そんなことはわかっている」とおっしゃる皆さんも多いことかと思いますが、なかなか健康 的な生活ができない現代社会のジレンマがあるのではないでしょうか? 冬場も生活習慣の見直しが大切。お体をお大事に。
2008.1.24 日本呼吸器学会認定呼吸器専門医 車川 寿一