2007年9月27日
『気管支のリモデリング』という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 日頃、診療をしていて、気管支喘息の患者さまにはよく説明するのですが、まだ、ほと んどの方はご存知ありません。単純に訳すと『気管支の再構築』ということになり、「気管支の構造が変化して元に戻らない状態」をさします。
近年、気管支喘息に関する知見が深まる中で、重症化した難治性喘息のメカニズムの一つとして、病理学的に理解されるようになったのがリモデリングです。 その変化とは、気管支の壁が線維性変化などを伴った分厚い層になることを意味し、慢性的な気道狭窄をもたらします。この狭窄は、単純な気道の収縮(気管支 を取り巻く筋肉の収縮)や浮腫と違って、自然に治ったり薬で十分に回復したりしません。では、なぜこのような元に戻らない状態が生じてしまうのでしょう か?
そもそも気管支喘息とは、気道の慢性炎症性疾患であり、その慢性炎症によって気道過敏性が上昇し、気道の筋肉収縮・浮腫・粘液過分泌とリモデリングに よって気道狭窄(気流閉塞)をもたらし、息切れ・喘鳴・咳などの発作症状を起こします。その本態が慢性炎症ですから、炎症を押さえ込んでいないと、いずれ 構造変化が起こってしまう訳です。ちょうど、皮膚のキズの修復過程において何回も引っかいて炎症を遷延化させると不完全な修復となり、硬い皮膚に覆われる ことと似ています。気管支の壁が分厚く硬くなってからでは、治療によっても元に戻らないというイメージが理解できるかと思います。
症状がないからといって放置していると、気道炎症が進み、後にコントロールが難しくなるケースがあります。気管支喘息にはきちんとした長期管理が必要ですので、患者さまには継続的な受診をお勧めします。
2007.9.27
呼吸器内科 車川 寿一
担当クリニック:南大沢メディカルプラザ