医療法人社団 めぐみ会

ドクターズコラム
Doctor's Columns

2018年10月01日

成人の百日咳

百日咳は、乳幼児だけでなく成人にも認められる疾患です。診断が難しく、家族内や学校での集団感染が毎年報告されています。百日咳は2006年から増加傾向に転じ、その主な要因は成人患者数の増加でした。成人は百日咳にかかっても重症化することはなく、特に治療しなくても自然に回復します。しかし、ワクチン未接種の乳児は重篤化するため、感染源となる成人を早期診断、治療して乳児への感染を防ぐことが非常に大切です。

  診断が難しい理由として、検査方法が挙げられます。百日咳が産生する毒素に対するIgG 抗体(PT-IgG 抗体)が従来実用化されていましたが、ワクチン接種によっても上昇してしまうなどの問題点がありました。そこで、新たな検査方法として後鼻腔ぬぐい液から抽出する百日咳菌核酸増幅法(LAMP法)が2016年11月に保険適用されました。また、血清の百日咳菌に対するIgA 抗体、IgM 抗体も2017年に民間検査会社から受託検査が開始されています。これらの検査の実用化に伴い「小児呼吸器感染症診療ガイドライン2017」では新たな診断基準が提示されました。そして、これらの新しい検査の登場によって、より早い時期での診断が可能となりました。成人の「咳嗽に関するガイドライン」も、この流れを受けて今後改訂されることが見込まれています。
 治療は、マクロライド薬という抗菌薬を使用します。咳が出る前の時期(カタル期)で投与すると症状の改善が期待できますが、症状のないこの時期に診断できることは多くありません。多くは長引く咳で初めて百日咳が疑われますが(痙咳期)、残念ながらこの時期での効果は劣ってしまいます。
 しかし、治療することで周囲への感染を防ぐことが期待できますので、有用性は高いと思われます。百日咳と診断された方と接触があり、激しい咳などの症状がある場合は、ぜひ医療機関を受診してください。

2018.9.14 日本呼吸器学会認定呼吸器専門医 山岸 亨

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